カテゴリ:Book shelf( 52 )
鬼警部アイアンサイド
a0031719_23544319.jpg書名:鬼警部アイアンサイド
著者:ジム・トンプスン
訳者:尾之上浩司

ジム・トンプスンはもう4年か5年くらい前に「ポップ128」という作品を読んだことがある。確か出張中の旅先で退屈しのぎに買ったのだけど、そのあまりのやさぐれぶりにずっぽりハマってしまったのだった。あんまりディティールは憶えていないけど、ちょっとした日常の悪意がどんどん増幅していって善なるものを駆逐していく、という感じだったと思う。ただ、ドロドロした悪ではなくて、すごく乾いた感じ。あ、たった今の思いつきたけど、ゲームで言えばGrand Theft Autoみたい。淡々と悪をこなす。で、最後に罰が待っているかというと待っていない。やったぜ!悪事完了みたいな終わり。おいおい、こんな終わり方でいいの?ヤサグレテいるなぁアメリカは。と思ったのだった。後になって、ジム・トンプスンを「安物雑貨屋のドストエフスキー」と呼んでいるのを目にして、思わず膝を打ったりもした。

で、本作。今度は勧善懲悪。車椅子のロバート・アイアンサイド警部が複雑に絡み合う事件から糸口を見つけ出していって最後に見事解決。そんな話。もともとアメリカのTVドラマのノベライズ版らしい。でもって、トリビアだけど、土曜の夜のウィークエンダーやKill Billのサントラでお馴染みの♪バッパラババッパーのジングル、これは『鬼警部アイアンサイド』のテーマなんでした。
まぁ、ハヤカワポケミスですし、肩の力を抜いて読むにはいいじゃないんでしょうか。サスペンスとしては及第点かな。それより、「ポップ1280」を未読の方は是非。チャールズ・ブコウスキーなどが好きな人もお薦め。
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by seed_for_thought | 2005-09-05 23:51 | Book shelf
太鼓叩きはなぜ笑う
a0031719_2313817.jpg書名:太鼓叩きはなぜ笑う
著者:鮎川哲也

随分、ここの更新を休んでしまった。本も読んでいるし、レコードも大量に買い込んでいるし、仕事の関係でゲームにも手を出しているので、ネタに事欠かないのだけど、逆にここの文章を書く時間がない!7月は仕切り直し、できるだけ更新します。

さて、本書は6月の初旬に大阪に出張に出掛ける東京駅の書店で買ったもの。短編ミステリが六編入り。行き帰りでさくっと読み終えるくらいの分量だと思ったので。

私立探偵の「わたし」が事件捜査に行き詰まると立ち寄るバー「三番館」。そのバーテンは事件の概要を聞くだけで、たちどころに解決の糸口を見つけてしまう。いわゆる安楽椅子探偵もの。

鮎川氏の作品は初読。他にもっと有名作はあるようだが、今までも何故か手に取らずじまいだった。これを機会に他作も読んでみよう。好きな作家が新しく加わるのは楽しい事だ。目の前に巨大なライブラリーがまた一つ現れて、これからそれに挑戦するということにもなるのだけど。
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by seed_for_thought | 2005-07-03 23:02 | Book shelf
伊坂幸太郎:ラッシュライフ
a0031719_23343972.jpg書名:ラッシュライフ
著者:伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の著作を読むのは「重力ピエロ」と「オーデュポンの祈り」と「陽気なギャングが地球を回す」に続いて4冊目。この作品も悪くなかった。でも、気に入って全著作をまとめて読みたくなるような、そんな気にはさせてくれない。ちょっと肌に合わないと言うか、何と言ったらいいだろう。強いて言えば、やっぱりこの人は村上春樹直系の人だからだろうか。良くも悪くも万人向けだと思う。もう少し毒が欲しい。
著者の描く世界は、日常と少しだけ非日常がブレンドされた世界。例えば「オーデュポン〜」では未来を予言するカカシが出てきたり、本作ではやはり未来を予見する新興宗教の教祖。あとは犯罪者。しかもちょっとしたことで犯罪を犯してしまった人達。それと法は侵していない悪人。で、ちょっと踏み外してしまった犯罪者は贖罪されて、悪人が奈落に落とされる。こういうパターン。
私がどうものめり込めない理由は、この辺の作者の倫理観。本当に悪い人しか地獄に落とせないようじゃ面白くない。その辺りが毒が足りない、と思う理由。最期に”救い”を入れたいのならもっと別の救いの方法があると思う。あんまり書くとネタばれになるから書かないけど。
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by seed_for_thought | 2005-06-03 23:33 | Book shelf
半島を出よ(上)(下)
a0031719_22502135.jpg a0031719_22513798.jpg書名:半島を出よ(上)(下)
著者:村上龍

村上龍の最新作。村上って言ったら春樹より龍派です。とはいえ、「13歳のハローワーク」とかは読む気がしなかった。それでも、新刊が並んでいて、ちょっと立ち読みしたら以下の出だしだったら、やっぱり読んでみたくなる。上下巻、原稿用紙1645枚のボリュームもGW中に一気読み。

北朝鮮のコマンド9人がプロ野球の開幕戦、福岡ドームを占拠する。2時間後484人の組織された特殊部隊が来襲、福岡中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。

過酷な戦場の現実やリアルな死と接する経験は、現在の日本の日常とはかけ離れていて、それが目の前に提示されてもなかなかリアルな事として実感できない。そういうリアルさをリアルな事として認識していく登場人物、というのが村上龍が設定するキャラクターの一つの類型だと思う。もちろん、リアルな事を認識するには圧倒的なリアルが必要な訳で、戦闘場面や北朝鮮兵(高麗=コリョと呼ばれる)による過酷な拷問、北朝鮮の悲惨な生活が徹底的に描き込まれる。章立てによって、そういう緊張感にあふれた場面と、日常を暮らしながら徐々にそういうリアルさを認識していく日本人が交互に登場する。この辺の構成は「5分後の世界」と似ている。

絶望的な状況の中、福岡市内で暮らしていたアウトローの青年達が反旗を翻す。彼らは皆、少年時代に殺人、虐待を受けたもの達ばかりである。高度に訓練された兵士達に立ち向かうゲリラ作戦が実行され、終局に向かってテンションは最高潮になっていく。

北朝鮮の地政学的なリスクは日に日に増していっている。この小説で村上龍が提示した危機も現実的なもの。こういうことが現実にならないよう祈る事と、実際の政治プロセスがどうなっているのか冷静に観察することしか、今の私にはできない。
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by seed_for_thought | 2005-05-21 22:52 | Book shelf
ブレイン・ドラッグ
a0031719_2305093.jpg書名:ブレイン・ドラッグ
The Dark Field
著者:アラン・グリン
Alan Glynn
訳者:田村義進

ここしばらくゆっくりと読書に時間をとる余裕がなくて、手近にある本を斜め読みばかりしていたのだけど、連休にどっかりと読もうと。まず、本書から。

のび太クンが宿題が早く片付くようにドラえもんに頼んで、頭の良くなる薬を出してもらい、宿題が終わって一安心。でも結局は、最後に手痛いしっぺ返しがくる、なんて話よくあるでしょ。本作は主人公がある日義兄から、一粒の錠剤を薦められたところから始まる。もちろん、この薬、脳に効く。さえないフリーのライターであった主人公はこの薬のおかげで手につかなかった原稿をたった一晩で片付け、のみならず新しい企画もひねりだす。とにかくinput/outputする情報量が飛躍的に増大し、しかも集中力が途切れない。この夢のような薬MDT-四八を変死した義兄の家から持ち出した主人公。もう服用しまくる。それでデイトレードに手を出して大儲け、ついには大企業同士のM&Aの交渉役まで上り詰める。さて、のび太クンのようにしっぺ返しを喰うのか?フォローするドラえもん役などいない。続きは読んでのお楽しみ。
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by seed_for_thought | 2005-05-09 23:01 | Book shelf
舞城王太郎はオザケン
という噂をmixiや2ちゃんねるで見かけたが、ホントだろうか。

舞城王太郎は覆面作家としてデビュー以来、公の場に出た事がないので正体不明。
一度「噂の真相」に顔写真が出た事があるそうだが、真偽のほどはわからない。
友人の編集者が確かな筋から仕入れた情報によると、男であることは間違いないらしい。
早く新作が出て欲しい。(ってず〜っと言い続けているのだが、、、)

追記(4/8):というエントリーをしたばかりだけど、今日「新潮」の最新号で新作を発見。タイトルは
『ディスコ探偵水曜日』
ヤバいよ、ヤバいよ。今から読みます。
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by seed_for_thought | 2005-04-06 00:32 | Book shelf
そして、みんなクレイジーになっていく【その2】
a0031719_22553935.jpgそして、みんなクレイジーになっていく【その2】
その1からの続き。
いよいよ佳境、以下の章を読み進める。
6.ディスコ  ラヴ・イズ・ザ・メッセージ
7.ディスコ2 金目当ての音楽
8.ヒップホップ ターンテーブルの冒険
9.ヒップホップ2 プラネット・ロック

前半はディスコの隆盛と衰退。伝説のクラブ「ザ・ロフト」から「サタデーナイト・フィーバー」まで。ここで、伝説のDJフランシス・グラッソが登場する。彼は機材がまだ発達していないのにも関わらず、2台のターンテーブルで違う曲をミックスする技術を開花する。違う曲同士のビートを合わせてミックスする手法。これはもう基本中の基本だが、どこにでも「オリジネーター」がいる、ということ。
そして、この時代からゲイがクラブカルチャーの中心に出てくる。そしてダンスミュージックがDJの影響で商業的に成功すると、ゲイ達も(レコード会社のマーケティングなど)社会的に進出する。
商業的な加熱は「サタデーナイト・フィーバー」に辿り着く。それはディスコ文化のひとつのバブルの頂点だった。そして、エイズの発生。ここでディスコは一時代を終える。

続いてはHIP HOPという革命。DJクールハークとグランドマスターフラッシュとアフリカ・バンバータによるターンテーブル上の冒険。
まずはクールハークが幼いころジャマイカで見たサウンドシステムのブロンクスでの再現。ここから全てが始まった。クールハークはとにかくありとあらゆる音楽をかけた。ギャング同士の暴力的ないざこざはサウンドシステムクラッシュと呼ばれる対決になった。そして、グランドマスターフラッシュによる「ブレイクビーツ」の発明。一つの楽曲の中のたった一カ所の最もFUNKYなドラムビーツをターンテーブル上で切り貼りするテクニック。そして、アフリカ・バンバータによる「プラネットロック」。
興味深いのはこの頃のPUNKとの繋がり。マルコム・マクラーレンももちろん登場する。当時のイベントはパンクスとB-Boyが同居していたらしい。彼らを結びつけていたのはブレイクダンス。
やがて、HIP HOPはラップ、ブレイクダンス、グラフィティという三位一体の文化になっていく。

続く。多分もうすぐ読み終わるので次回が最後。
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by seed_for_thought | 2005-03-17 22:55 | Book shelf
本屋さんもポイント制 三省堂、本格導入で全国波及へ
本屋さんもポイント制 三省堂、本格導入で全国波及へ
 三省堂書店は10日から、東京の神田本店など4店舗でポイントをためると金券がもらえるサービスを始める。4月末までに実施店舗を25店舗にまで拡大する予定だ。大手書店によるポイントサービスの本格展開は初めて。これまでポイントサービスに強く反対してきた書店団体も容認姿勢に転じつつあることから、他の書店にも広がりそうだ。

中略

 再販制度の見直し論議の中で、公正取引委員会が「(ポイントカードなどのサービスは)消費者利益に資するものと考えられる」という見解を示したのを機に、5年ほど前から鉄道会社系の書店や、出版物を扱う家電量販店などがポイントサービスを始めた。

以下略。全文はリンク先

*
これは地味ながら大きなニュース。再販制度に守られた日本の書籍流通業(出版社、取次、書店)のあり方を問い直すきっかけにもなりそう。
個人的には将来書店はこうなって欲しい。

☆品揃えと陳列の個性化
→どこにいっても没個性な書店が多すぎる!
☆新刊、中古本をミックスしたプライスラインと在庫の充実
→BOOK OFFでは物足りない。
☆本好きのためのポイント還元
→やっぱり買ったら買った分の還元をして欲しい。ヨドバシみたいに。
☆店員のコンシェルジェ化(商品知識と接客スキルの向上)
→〜という本、ありますか?と聞いて「はぁ?」という顔をされたくない。
☆うまいコーヒーを出す
→できれば買った本をすぐにコーヒー飲みながら読みたい。
☆趣味のよい音楽が流れている
→単純にJAZZとかボサノバとかかけてんじゃねーよ。
☆スタッフにかわいい女の子がいる
→できれば。

こういう書店がある駅に住みたい。
以下、こんな本屋さんが欲しい!というコメント募集。
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by seed_for_thought | 2005-03-10 23:56 | Book shelf
万物理論  グレッグ・イーガン
a0031719_2148558.jpg書名:万物理論
   DISTRESS
著者:グレッグ・イーガン
   GREG EGAN
訳者:山岸真

2055年、全ての自然法則を包括する単一の理論、"万物理論"が発表されようとしていた。ただし、3人の物理学者がそれぞれ異なる学説で。もちろん、単一の理論である故、正しい学説は一つしかない。ネットワークメディア記者のアンドルー・ワースは医療分野が専門のジャーナリストだが、この3人の物理学者のうち、20代のノーベル賞受賞者、ヴァイオレット・モサラの取材をすることになる。原題の"DISTRESS"は正体不明の奇病。世界中で爆発的にその感染者を増やしている。

SFは物語の時代設定、概念などに馴染むのに時間がかかって、最初の100Pくらいはなかなか読み進むことが出来ないが、それを掴むと逆にぐいぐいと物語の惹き込まれる。本書は万物理論をめぐっての議論に留まらず、宗教論、生命倫理、ジェンダー問題も内包しており、さすが帯で「ハードSF」と謳うだけのことはあった。

このところ読んで来た本にも登場した量子論とエドワード・サイードがキーワードとして本書にも盛り込まれていた。両者については是非一度詳しく読んでみたい。
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by seed_for_thought | 2005-03-05 21:49 | Book shelf
町田康×舞城王太郎!?
『奈津川サーガ』の新刊発売が延期に次ぐ延期で痺れを切らしていたところに、こんなニュース。
どうやら、青林工藝舎の漫画誌「アックス」に以下のような広告が掲載されたらしい。

詩も小説もマンガもすべて読みきりの真相間(引用元原文ママ)雑誌、『少年文芸』は4月発売!
西岡智(西岡兄妹)
谷川俊太郎×西原理恵子
町田康×舞城王太郎
田口犬男×吉田戦車
ムカイチハル×西岡千晶
さそうあきら こうの史代 五十嵐大介 古泉智浩 島田虎之介 近藤聡乃 クリハラタカシ

ネタ元は 舞城舞城大舞城超舞城王太郎してる。part9 (2chスレッド)経由、florcha(はてなblog)

「少年文藝」というタイトルといい、舞城王太郎を起用していることといい、「ファウスト」をかなり意識したものではなかろうか。
このラインナップを見ると、町田康のテキストに舞城がイラストを寄せるということだろうか。すごいセッションになりそうな予感。舞城の絵の巧さはコチラの企画でも周知の通り。この雑誌については詳報を待ちたい。勿論、「奈津川サーガ」も待ちながら。
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by seed_for_thought | 2005-02-27 22:35 | Book shelf