「サンプリング」には使用料が必要——米控訴裁判所判決
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「サンプリング」には使用料が必要——米控訴裁判所判決

連邦控訴裁判所は7日(米国時間)、ラップ・アーティストに対して自らの作品に含まれたあらゆる楽曲のサンプルについて、サンプリングされた断片が、たとえ原曲を識別できないような非常に短時間であったとしても——使用料を払うべきだという判決を下した。

 下級裁判所はすでに、アーティストが他のアーティストの作品をサンプリングする際には、支払い義務があるという判断を下していた。しかしこれまで、原曲が識別できない限りは、楽曲の小さな断片を——この音をこっちに、あのコードをあっちにといったように——使用することは合法的だとみなされてきた。

中略

 今回のケースのほかにも、新しい作品に既存の録音された楽曲の一部分を抜き出して使ったとして、テネシー州ナッシュビルでは少なくとも800件の訴訟が起きている。

 今回のケースは、『N.W.A.』の楽曲『100マイルおよびランニング』(100 Miles and Runnin)が主な争点となっており、1970年代のファンクバンド、ファンカデリックの中心人物だったジョージ・クリントン作の『ゲット・オフ・ユア・アス&ジャム』(Get Off Your Ass and Jam)に使われていたギターによる3音のリフをサンプリングして使っていた。

 この2秒間のサンプリングではギターの音程が下げられており、このサンプルした音が「ループ」として繰り返され、16拍ぶんをカウントする。このサンプル音は、新たにつくられた曲の中に5回登場する。
以下略、詳しくはリンク先で。
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ラップミュージック(以下、ラップ。ここではあえてHIP HOPとは呼ばない)、というか80年代の終わり頃から花開いたサンプリングミュージック(ハウス、グランドビート、テクノ、ドラムンベース、90年代のロックなど)とサンプリング音源の権利関係に関する争いはずっと続いてきた。ラップはそもそもストリートでターンテーブルを並べて同じ曲の一部(ブレイクビーツという)を延々とつなげて連続したビートを作り出し、その上に「おしゃべり」を重ねるというスタイルの音楽をルーツとしている。(初期のラップはこの延々と同じ音をつなげるという行為をシュミレート=楽器で演奏していた。ちなみにこの頃までのラップをold schoolという)。
そのうちこのブレイクビーツをサンプラーと呼ばれるデジタル機器に録音し、このデジタル化した音源をシーケンサーと呼ばれるデジタル機器の上でシュミレート=コンピューターが延々とつなげる=ループするようになる。当然、機器の性能の向上がラップミュージックの進化に大きく影響する。メモリの容量が物理的にサンプリングする音質や時間に関わり、CPUの性能が楽曲を制作する処理速度に関わるからである。(当時から好まれた機材の中心は日本製のROLANDだったりAKAIだったりする)。この辺までのラップをmiddle schoolと呼ぶ。当時好んで使用されたのはJames Brownの数々の楽曲であったり、Ultimate Breaks & Beatsというブレイクビーツがいっぱい詰まったオムニバスに収められた楽曲だった。もちろん、サンプリング、ループという手法は上述した数々のダンスミュージック、そして、ロック音楽にまで派生していく。
さて、このデジタル機器の向上がラップに進化を常に与え続け、サンプリングソースをあらゆる音楽に拡大することで表現としてのラップが飛躍をとげていた頃、サンプリングされた音源に関する訴訟がおこる。当時としてはまさにサンプリングミュージックの一つの到達点であったDe la soulのデビュー作"3 Feet High and Rising"に収められた楽曲にturtlesの音源が使用されており、これがもとでturtulesからDe la soulは訴えられ裁判に負けてしまう。これがもとでラップは大きく転換していく。この頃から楽曲のクレジットにはサンプリングに関する権利処理をした場合、かならず原曲の楽曲名、作曲者名、演奏者などを明記させることになった。と同時に権利処理を必要としない楽曲のサンプリングが増えていく。(ラップにjazzの音源が盛んに用いられ始めたのもこの頃から。a.tribe.called.quest の2nd、law and theoryはその端緒となった)。ちなみのこの辺までをnew schoolと呼ぶ。
以降、ラップはサンプリング使用とそれに必要な権利処理を巧みにかわしつつ今日まで続いてきた。サンプリング音源の出典が全くわからなくなるようにデジタル的に加工したり、一音一音というレベルで順番を組み替えたりすることで。今回の訴訟結果は今後のサンプリングミュージック全てに影響を与えかねない結果。個人的には"大ネタ使い"と呼ばれる原曲を大胆にそのまんまサンプリングされたタイプのラップが好きなのでこうしたタイプの曲がリリースされにくくなるのだけは避けて欲しい。
サンプリングはそもそも引用ではなく盗用なのだ。その本質が法解釈によって檻に閉じ込められないように願う。
(今回はかなりの部分をうろ覚えで書いているので、多くの指摘、訂正をお願いしたい)
写真は我が家のターンテーブル。左にTROJAN、右にSTAXレーベルのレコードを並べてみる。これはあるアーティストのアルバムのスリーブのイラストの引用。さて、なんでしょ?
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by seed_for_thought | 2004-09-11 02:31 | Vinyl+Music
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